9月11日といえば、この先誰もが忘れることがない日付になるのだろうか。ニューヨークのあのテロ事件をきっかけに、人生が変わってしまった人ってこの世の中にどれくらいいるのだろう。この事件に限らず、何らかの事故、病気、天災地変の影響で思い描いていたその先の人生が全く変わってしまったという人はこの世に数え切れないくらいいるだろう。というより、生きている限り皆、多かれ少なかれ起こりうることと言った方がいいだろうか。私もそこまで大げさなものではないものの、少なからずこの日をきっかけに思っていた予想図が白紙状態となってしまったひとりかもしれない。
大好きなモントリオールに住み始めて2年。カナダの永住権もすでにその前の年に取得し、ずっと携わってきた旅行業界で思いっきり仕事ができてとても充実していた。モントリオールそしてケベック州のいいところを、日本のお客様へもっと宣伝できないだろうか。紅葉がきれいなローレンシャン高原をたずねて、秋にはわんさと日本人観光客が押し寄せてくるのに、どうしてそれ以外の季節、特に春夏には来て貰えないのだろう。いつもそんなことばかり考えていた。この事件をきっかけに、勤めていた旅行会社も多大な影響を被っていった。本社があるバンクーバーでは、通常冬も続けて勤めていた人たちが、次々と一時的なレイオフをされていった。ここモントリオールの契約社員も冬に入る前に予定よりも早く契約を終了せざるを得なかった。そんな中で、私は唯一冬も続けて仕事をしてもらいたいという確認を上司と交わしていた。他の皆には申し訳ないと思いながらも、そう言われた以上はがんばろうと思っていた。
カナダにずっと住める権利を持っていて、大きな収入は得られないものの年間を通してのフルタイムの仕事があるというのは、ここモントリオールに住む『独身の』日本人だったら願ってもないことだと思うはず。皆モントリオールに魅せられて住みつく。でも永住権がない、仕事がうまく見つからない、フランス語力が足りないから、と同じような悩みをかかえているのである。そのころの私は、99年に別れた彼以来、特別好きな人もいずシングルライフを謳歌していたころだった。この先、今のポジションを維持しながら好きな人ができて、ここモントリオールでこの仕事が続けられたらいいな、ここでずっと生活ができる人と結婚できたらいいな、なんておぼろげに思っていた頃だった。
10月20日過ぎだっただろうか。仕事中突然上司から呼び出された。個人的に話があるとのこと。オフィスは、市内でも最大級のホテルの中にある。1969年、ジョンレノンとオノヨーコが平和のための公開ベットインを行ったホテルとして中年層だったら『あ〜あの時の!』と思い出す人もいるであろうあのホテルである。このホテルのロビーで上司と2人だけで話しをしはじめた。結論からいうと、それは突然の『解雇宣告』だった。これからも続けてやって欲しいと言われて安心していたところから、いきなり崖下に突き落とされ、そのまま頭を打ったような気分だった。会社の方針で、モントリオールオフィスは冬季閉鎖という決定が下ったのだそう。宣告をした上司も含め結局全員が事実上の解雇となった。ちょうど同時期に通い始めていたガイド学校で、市公認の免許を取得して今の仕事に役立てよう、と思っていたところがこの決定により、もしかしたら、ガイドとして独り立ちしていかなくてはいけなくなるのかな、という状況に変わりつつあった。後処理を含めてこの会社には結局11月20日までいることになった。今思えばこれが、彼と出会うきっかけの発端だった。
to be episode 2...
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